大好きな海。先日、久しぶりに訪れた。
関東に住んでいながら、湘南エリアは未踏の地だった私が、ここを好きになるに至ったのは、
彼のおかげ。
彼は私と出会うよりも前から、この辺りが好きで、よく来ていたそう。自分の生まれ育った街に似ているのだとか。
彼とは、かれこれ13年のつきあいになる。
シングルマザーになって、もう恋愛はいいかな、と思っていたけれど、彼とは自然と一緒にいたい気持ちになった。その気持ちが恋愛感情と気づくより先に、一緒にいる心地良さに気づいた。
何度も彼と一緒に、この海を見た。
季節や時刻、潮の満ち引きによってその景色を変える。毎回違う絵画の作品を見に来ているようだった。
彼との子どもが欲しい。そう思ったのはいつからだろう。
しかし、彼の方はと言うと、子どもは望んでいなかった。私と2人の時間を自由に使えるようになることを彼は望んでいた。

「彼との子ども」にこだわりたかった思いと、元々、「幼い頃から3人のお母さんになりたい」と言う私の気持ちと…。あとは、助産師として、自然なお産を体験してみたい気持ちと…。人生は1度きり。死に際に後悔するのだけは嫌だと思っていた。
一時は、方向性の違いから別々の人生を歩むことも考えたが、私の中で、やはり彼しか考えられなかった。通るかもわからないプレゼンを彼にしてみた。
「このままチャレンジせずに更年期に突入したら、多分私気が狂う。このままチャレンジせずにいたら、死に際後悔する。死んでも死にきれない。棺桶から出るよ」と。
恐怖か、熱意に絆されたか、私の希望を聞いてくれた。今から振り返ると、自他共に認める頑固さを有する彼が、私の希望を受け入れてくれたことこそが奇跡だったように思う。
妊活宣言に入り、「その時」が来るのに時間はかからなかった。これまた奇跡だと思う。
そんなこんなで本当に幸運に恵まれて、恵まれ過ぎて怖いくらいだった。
「こんなにラッキーでいいの!?こんなに幸せでいいの!?」と。
何度も何度も、彼とこの海を訪れ、心の中で思ったこと。
「この人の子どもと一緒にここに来て、海を見たい」
夢見ては叶わぬ願と諦めてきた光景が、今目の前に広がっている。

この瞬間、この一瞬一瞬が幸せ過ぎて、時が流れて行くことが惜しかった。
時がまるで砂のようで。自分の手の指の間からサラサラとこぼれ落ちて行くことが惜しい。
まだ自分で歩くことができないわが子を抱き、その温もりに顔を埋める。
熱い涙が頬を伝った。
「人はみんな幸せを求めるけれど、幸せが過ぎると生きていくことが怖くなるものなのかもしれないな…」
そんなことを考えながら帰路についた。夜のカーテンが引かれた車内。チャイルドシートで眠るわが子の表情が天窓からの月明りに照らされる。
「また来ようね。次は手を繋いで一緒に歩こう!」
シングルマザー。苦しいことの方が多いのかもしれない。
でも、また新たな目標ができたから、頑張るよ?お母さんは。

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